国内民間企業初の大気圏再突入・回収技術獲得に向け、連携協定を結ぶ福島県南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」で実施宇宙で実証・実験を行ったあと、地球に帰還可能な宇宙機を開発する株式会社ElevationSpace(代表取締役CEO:小林稜平、読み:エレベーションスペース、以下「ElevationSpace」)は、宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」の回収カプセルについて、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)において実施した着水衝撃試験(以下「本試験」)に成功したことをお知らせします。回収カプセルは、顧客から預かったペイロードを収納して宇宙から地球に帰還する部分であり、初号機「あおば」においては宇宙で培養を行った株式会社ユーグレナの微細藻類ミドリムシ等を持ち帰る予定です。背景国際宇宙ステーション(以下、「ISS」)が存在するような高度2,000km以下の「地球低軌道」は、アクセスや物資補給・回収が比較的容易であることから(※)、政府が2023年に発表した宇宙基本計画の中で「宇宙環境利用のための貴重な場」と位置づけられており、アルテミス計画をはじめとした月以遠への活動にあたって必要となる技術の獲得・実証の場としても利用していくことが明言されています。※ ISSは高度約400kmに位置する一方、月までの距離は384,400km。しかし、これまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきたISSは、構造寿命などの関係から2030年に運用を終了することが決定しており、宇宙環境利用の”場”を継続的に確保することが課題になっています。このような課題を受け、ElevationSpaceは、「ポストISS時代」を見据えた、宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R(読み:イーエルエス・アール)」の提供を目指しています。「ELS-R」は、無重力環境を生かした実証・実験を、無人の小型衛星で行い、それを地球に帰還させてお客様のもとに返す国内初のサービスです。宇宙での実証・実験の場を提供するだけでなく、成果物を帰還させることができるため、宇宙で実証した材料やコンポーネントを地上でより詳細に解析することなどが可能となり、高品質な宇宙実証環境を提供することで、民間事業者等の更なる宇宙産業参入促進や、日本の宇宙産業力強化に貢献することを目指しています。この「ELS-R」事業実現には、回収カプセルを燃え尽きず、損傷させずに地球に帰還させるための「大気圏再突入・回収」技術が必要となりますが、この技術を獲得している民間企業は世界的にもほとんど存在せず、国内ではElevationSpaceのみが挑戦している技術です。 今回実施した試験および回収カプセルの開発について試験名称 : 回収カプセル着水衝撃試験試験目的 : 海上回収時、着水の衝撃がカプセルやペイロードに与える影響を確認し、カプセルの構造設計等に問題がないことを確認する期間 : 2024年4月24日~26日場所 : 福島ロボットテストフィールド 屋内水槽試験棟 (福島県南相馬市)宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」は、宇宙で実証・実験を行った後、高推力のハイブリッドスラスタによって地球低軌道を離脱し、大気圏に再突入、衛星本体から分離した回収カプセルが大気圏を燃え尽きずに突破し、一定の高度に到達後、カプセルのサイドパネルを展開することで、内側のパラシュートが引き出され、緩やかに降下、海上に着水する仕組みです。大気圏再突入・回収ミッションにあたっては、「軌道離脱推進技術」「再突入技術」「回収技術」をすべて実現する必要がありますが、なかでも再突入する回収カプセルの構造設計や、パラシュートを展開し速度を下げて降下する技術は重要度の高い技術課題です。特に、「ELS-R」では、地球に帰還した回収カプセル内のペイロードを顧客に引き渡すため、内容物への影響を最小限に着水させる必要があります。この度実施した本試験において、カプセル構造の耐衝撃性能を確認し、複数角度での着水時衝撃加速度データの取得に成功しました。回収カプセルの開発にあたっては、2018年に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)が成功させたISSからの物資回収ミッションである「HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)」の知見を踏まえており、JAXAでHSRC開発を主導していた渡邉泰秀氏を技術顧問に迎え、開発を行っています。「あおば」においては、HSRCと同様の円錐台形の形状や、HSRCで実証された熱防護材(アブレータ)を使用することで信頼性を担保しつつ、サイドパネル保持開放機構等には自社開発の独自技術を採用することで、低コスト化を実現しています。▼関連プレスリリースJAXAにて再突入技術開発を主導してきた渡邉泰秀氏がElevationSpaceの技術顧問に就任(2021年12月27日)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000074085.html宇宙から燃え尽きずに物を持ち帰る”回収カプセル”、試験用モデルにおいてパラシュート格納サイドパネル展開試験成功(2024年1月9日)https://elevation-space.com/posts/news_20240109 サイドパネル展開試験時に使用した回収カプセル試験用モデル 自治体・地元企業との連携についてElevationSpaceは、本試験を実施した福島ロボットテストフィールドが所在する南相馬市と、2023年4月に連携協定を締結しています。協定項目でもある「開発促進に向けた市内の実証場所確保」として、本試験のほか、「ELS-R」開発にあたって必要となる海上での実証試験についても調整を進めているところです。また、南相馬市をはじめとする浜通り地域には、製造業を中心とした宇宙産業と親和性の高い企業が多数あり、こうした地元企業とものづくり面での連携を行っています。さらに、東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するため、当該地域の新たな産業基盤の構築を目指す福島イノベーション・コースト構想推進機構(以下「福島イノベ機構」)の伴走支援の下、福島イノベ機構の「ビジネスアイデア事業化プログラム」に採択されるなど、取り組みを加速しています。▼関連プレスリリース宇宙スタートアップのElevationSpace、宇宙産業の一大拠点である南相馬市と人工衛星開発に係る連携協定を締結 (2023年4月28日)https://elevation-space.com/posts/news_20230428Fukushima Tech Create 2024 成果発表会に登壇しました(2024年2月1日)https://elevation-space.com/posts/event_20240201福島イノベーション・コースト構想 メディア発表会に登壇しました(2024年3月1日)https://elevation-space.com/posts/event_20240228これからも、東北ひいては日本の経済発展に寄与するため、「ELS-R」の着実な開発・実現に加え、浜通り地域を起点とした宇宙産業バリューチェーン(価値連鎖)の構築支援や、更なる地元企業との連携、現地雇用の創出を進めてまいります。ElevationSpace概要ElevationSpaceは、誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにすることを目指している東北大学発の宇宙スタートアップです。東北大学吉田・桒原研究室でこれまで開発してきた15機以上の小型人工衛星の知見・技術を生かし、無重力環境を生かした実験や実証などを無人の小型衛星で行い、それを地球に帰還させてお客様のもとに返す宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」を開発しています。会社名 :株式会社ElevationSpace(英文表記:ElevationSpace Inc.)所在地 :〒980-0845 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1 東北大学マテリアル・イノベーション・センター401号室青葉山ガレージ設立 :2021年2月代表者 :代表取締役CEO 小林稜平ホームページ:https://elevation-space.com/事業内容 :宇宙環境利用・回収プラットフォーム事業、宇宙輸送事業、宇宙建築事業■「ELS-R」とは?これまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきた国際宇宙ステーション(ISS)は、構造寿命などの関係から2030年末に運用を終了することが決定しており、宇宙環境利用の”場”の継続的な確保が課題になっています。ElevationSpaceは、「ポストISS時代」を見据え、宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R(読み:イーエルエスアール)」の提供を目指しています。「ELS-R」は、無重力環境を生かした実験や実証を、無人の小型衛星で行い、それを地球に帰還させてお客様のもとに返す国内初のサービスです。%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F_2m_GXSDvdI%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E